私は自分の名前が嫌いだった。
親が着けた名前の由来は「木には人が集まるから、漢字に木が入っている1文字の名前」が私の家の命名の決まりごとだ。
姉妹みんな1文字の漢字で木がどこかに含まれている。
母が考えた名前の候補がいくつかあったが、男の子っぽいと理由で父が却下し、父が栞という名をつけた。
私はその由来も名前そのものも好きじゃなかった。
そもそも、しおりも男の子っぽくないか?と思っている。
親にはもちろん伝えたことはないが、なんとも親不孝な娘だ。
中学生のころ、放課後に名前の話になり、その頃仲が良かった友人と担任の先生にそのことを話した。
すると先生が、本に挟むしおりと旅のしおりはこの漢字だと言うことを教えてくれた。
そしてこんな言葉をくれた。
「本に挟むしおりは多くのページからひとつのページを探す目印になる、旅のしおりは迷わないように案内をしてくれる。素敵な名前で素敵な漢字だ。」
と。
中学生の頃なので、一言一句このままの言い方だったかまでは覚えていないのだが…。
ただ、私はその瞬間、自分の名前が大好きになったことは明確に覚えている。
